遺言書を偽造・隠匿した場合、相続を受けることはできません。
相続欠格
被相続人等の生命又は遺言行為に対し、故意に違法な侵害をした相続人は、その被告相続人との関係で、法律上当然に相続資格を失います。これを相続欠格といいます。
民法は、相続欠格について5つ規定しています(民法891条)。
①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
ご質問は、上記の⑤に該当します。
隠匿について
【参考判例】
・相続人の中に、遺言書の存在を知っている者がいた事案で、判例は隠匿に当たらないとしています(最判平6.12.16)。
・自筆遺言証書の兼任を受けずに保管する行為について、すでに他の相続人等に遺言の存在、内容を明らかにしていたことを理由として、隠匿に当たらないとした判例があります(神戸地判平4.3.27)。
偽造について
【参考判例】
押印を欠き方式違背として無効な遺言書に押印する行為について、偽造、変造には当たるが欠格者に当たらないとして判例があります(最判昭56.4.3)。
この裁判例は、「相続に関する被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、民法891条5号の「偽造又は変造」にあたるけれども、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときには、右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらない」と判示しています。