遺言書の訂正の仕方を教えて下さい【弁護士が解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

夫が亡くなり、自筆で書いた遺言書を発見しました。

生前に夫に遺言書を見せてもらった際には、「すべての財産を妻のAに相続させる。」と書いてありましたが、夫は後に「妻のA」の部分に斜線が引き、「子のB」と訂正していました。

訂正印などはないのですがこの遺言は有効なのでしょうか?

有効だとすれば遺産は私Aが相続するのでしょうか、子どものBが相続するのでしょうか?

 

弁護士の回答

遺言書の訂正は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければなりません。

 

遺言書とは

人が自分の死後、その効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示のことを遺言といい、遺言書はその遺言が記された書面のことをいいます。

遺言書の種類としては、①自筆証書遺言書、②公正証書遺言書、③秘密証書遺言書の3種類あり、3種類それぞれにおいて成立させるための要件が異なっていますので、注意が必要です。

遺言書の種類と書き方について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

 

遺言書の訂正方法と効力

自筆で書いた遺言書の訂正

自筆で書かれた遺言書の場合、その内容を一部削除したり、修正するには、民法で規定された厳格な方式で行う必要があります(これを法律では「加除その他の変更」と呼んでいます)。

民法には、以下のとおり、修正の方法が記載されています。

「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」

つまり、

  1. ① その場所を指示すること
  2. ② 変更した旨を付記すること
  3. ③ 付記部分に署名すること
  4. ④ 変更場所に印を押すこと

が必要になります。

根拠条文
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:民法|電子政府の窓口

 

方式に従わなかった場合の効力

加除その他の変更に際し、上記の方式に従わない場合でも、遺言書自体が無効になるわけではありません。

訂正した元の部分が読めるのであれば、その部分を含めて有効な遺言として扱われますが、訂正部分については効力が生じません。

相談者の場合、「妻のA」が読めるのであれば、妻のAが全ての財産を相続することになります。

もっとも、訂正部分(「妻のA」の部分)が読み取れない場合には、その条文自体が無効となってしまいます。

なお、Aさんはすべての財産を相続しますが、Bさんも遺留分があるため、Bが遺留分侵害額請求をしてきた場合には、Bに財産の一部を渡す必要があります。

 

具体的な記載例

では、具体的にはどのように修正すればよかったのでしょうか。

具体的には、下記のように訂正を行う必要があります。

遺言書

第1条 すべての財産を妻のAに相続させる。
第2条 祭祀を主宰すべき者として子のBを指定する。

平成〇〇年×月△日
遺言者 □□□ ㊞

 

遺言書

            子のB ㊞※
第1条 すべての財産を妻のAに相続させる。
第2条 祭祀を主宰すべき者として子のBを指定する。

平成〇〇年×月△日
遺言者 □□□ ㊞

本遺言書第1条の1行目の「妻のA」とあるのを「子のB」と訂正した。
遺言者 □□□ (←署名してください)

※署名の横に押した同じ印鑑で押印してください

 

 

まとめ

以上のとおり、遺言書は、厳格な方式が定められており、その訂正や削除なども法律で決められた方法によらないと効力が生じないことになっています。

そのため、もし遺言書の一部を訂正したり削除したいという場合には、再度遺言書を書き直すのがよいでしょう。

また、遺言者としては、相続人の遺留分も考慮した遺言書を作成することで、相続人が争いに巻き込まれないようにしたほうがよいでしょう。

遺言書は、自己の思いを相続人らに伝える最後の文章です。

その思いが効力を生じなかったり、相続人らの紛争を招くとすれば、遺言者の意思にはそぐわないことになってしまいます。

まずはどのような思いを持っているのか、どのような遺言にしたいのかを当事務所の弁護士にご相談ください。

思いを最大限に実現できる遺言書の作成をお手伝いいたします。

 

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