相続放棄とは何ですか?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続放棄

弁護士の回答

相続放棄をすることにより、始めから被相続人の相続人とならなかったことになり、被相続人の権利義務を一切承継しないことができます。

民法上、人が死亡したときには、相続人が相続開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものと定めています(民法896条)。

しかし、相続人の中には、遺産相続を希望しない人もいますので、そのような場合のために相続放棄という制度が用意されています。

 

相続放棄とは

お金相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も含む全ての相続財産の一切を放棄することができる制度のことをいいます。

とりわけ、被相続人の遺産がマイナスとなるときに、借金や損害賠償責任を負わないようにするために利用されることが多い制度です。

 

 

相続放棄の手続

相続放棄をするためには、被相続人の亡くなった当時の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければなりません。

家庭裁判所に申述をするにあたっては必要書類がいくつかあります。

相続放棄の申述書

相続放棄の申述をする人の現在戸籍

被相続人住民票の除票又は戸籍の附票

その他必要な戸籍

その他必要な戸籍とは
  1. 申述をする人が、被相続人の配偶者の場合
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  2. 申述をする人が、被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)の場合
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  3. 申述をする人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合
    • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  4. 申述をする人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合
    • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    • 申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

とくに、被相続人があなたの兄弟姉妹や叔父叔母の場合には、古い戸籍を読み解いたり、多くの戸籍を集める必要があります。

また、先順位の相続人が相続放棄のために提出している戸籍については、重複して提出する必要はありません。

相続放棄の手続きについて、詳しくはこちらをご覧下さい。

 

 

相続放棄の要件

裁判所に相続放棄の申述が受理されるためには、大きく2つの要件があります。

熟慮期間

相続放棄をするには、被相続人が死亡したことを知るなどして、相続人となったこと(相続の開始)を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をし、受理される必要があります。

これを「熟慮期間」といいます。

家庭裁判所は、相続放棄の申述が熟慮期間内にされたものであると認めれば当該申述を受理しますが、もしその申述が熟慮期間の経過後にされたものであると認めた場合には、その申述の申立てを却下します。

申立てを却下するということは、家庭裁判所がその相続放棄の申述を受け付けないということです。

相続放棄ができる期間について、詳しくはこちらをご覧下さい。

 

相続放棄が認められない事情(法定単純承認事由)

熟慮期間中であっても、以下の事情があるときには相続について単純承認したとされて、相続放棄ができなくなります(民法921条各号)。

  1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
  2. 相続人が熟慮期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき
  3. 限定承認・相続放棄後の背信的行為

ひとくちに「処分」といっても、被相続人のゴミの処分や金銭的な価値のないものを処分するなど、一般的に許容される範囲で行われた行為については、法定単純承認にはならないと考えられています。

法定単純承認について、詳しくはこちらをご覧下さい。

相続財産の処分については、詳しくはこちらをご覧下さい。

 

 

相続放棄の効果

相続放棄が裁判所で受理をされると、相続開始時にさかのぼって、相続人ではなかったことになります。

これにより、相続人としての地位がなくなることで、被相続人の借金や損害賠償責任から解放されるということになります。

ただし、相続放棄が受理された場合でも、相続放棄をした元相続人には、次の相続人に遺産を引き継ぐまでの間は、遺産の管理をする義務があります(民法940条1項)。

とくに、被相続人の遺産の中に、不動産があるときには、そのまま放置してしまうと、近隣住民への被害が出てくることもありますので(例えば、瓦が飛ぶ・木々が生茂る・動物の棲家になり生活被害が出る等)、適切に次の相続人に引き継ぐ必要があります。

引き継ぐ相続人がいなくなった場合にも、そのままにしていると遺産を管理する義務は残りますので、最終的には、相続財産管理人を選任して、その管理人に遺産の管理を引き継ぐことになります。

相続財産の引き継ぎについて、詳しくはこちらをご覧下さい。

 

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執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 個人分野:家事事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 相続の相談件数年間285件(2019年実績)を誇るデイライト法

律事務所の代表弁護士。家事事件に関して、弁護士や市民向けのセミナー講

師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおい

て家事事件での取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を

執筆。


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