「相続分」の放棄と「相続放棄」の違い

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続放棄

弁護士の回答

「相続分」の放棄では、相続放棄と違い、相続人としての地位がある状態で、相続財産の自己の持分を放棄する意思表示のことをいいます。

 

「相続分」とは

共同相続人の積極財産(プラスの財産)・消極財産(マイナスの財産)を含む相続財産全体に対する各相続人の持分のことを指します。

「相続分」の放棄は、相続にあたって自分の取り分はいらないという一方的な意思表示ですが、相続放棄と違い、もともと条文に根拠を有しておりませんので、放棄された相続分が誰に帰属するかは一概には言えません。

相続放棄とは
被相続人の積極財産も消極財産も全く相続しないというもので、相続開始後3か月以内に家庭裁判所に対して申述する必要があります。

相続分について、詳しくはこちらからご覧ください。

 

 

「相続分の放棄」とは

遺産を構成する個々の財産に対する共有持分の放棄が包括された性質をもつと考えて、放棄された相続分は民法255条にしたがって、他の相続人に各人の相続分に応じて帰属するという説が有力です。

もっとも、他の同列グループの相続人に帰属するとの考えもあり、必ずしも取り扱いは一律とはいえません。

 

具体例

図のような家系の場合、相続人は配偶者A、子B ・C、子Dの孫(代襲者)E・F・Gになります。

子Dの孫(代襲者)Gが、相続放棄をした場合の相続分の考え方と、相続分の放棄をした場合の各相続人の相続分を以下で詳しく説明します。

相続放棄をした場合

相続放棄をした場合には、その相続放棄者は相続人ではなくなるということになりますので、その相続放棄者がいない形での法定相続分を算定することになります。

この場合、相続人は配偶者A、子B ・C、子Dの孫(代襲者)E・Fで、各相続人の相続分は以下のようになります。

・配偶者A:2分の1
・子B・C:6分の1
・孫E・F:12分の1

 

相続分の放棄をした場合

相続分を民法255条にしたがって帰属すると考える場合

Gが相続分の放棄をした場合には、相続分を民法255条にしたがって帰属すると考えるときには、Gの本来の法定相続分である18分の1が、他の相続人の相続分の割合にしたがって分配されることになります。

すなわち、Gの相続分18分の1が配偶者A:子B:子C:孫E:孫F=9:3:3:1:1の割合で分けられますので各相続人の相続分が
以下のようになります。

・配偶者A:17分の9
・子B・C:17分の3
・孫E・F:17分の1

他の同列グループの相続人に帰属すると考える場合

Gが相続分の放棄をした場合には、他の同列グループの相続人に帰属すると考えるときには、同列グループ(例えばE F Gの代襲者のグループというものが考えられます)に帰属することになります。

したがって相続分は、以下のようになります。

・配偶者A:2分の1
・子B・C:6分の1
・孫E・F:12分の1

 

 

「相続分」の譲渡

譲渡するイメージ画像「相続分」の譲渡とは、相続財産の自己の持分を包括的に譲渡するものです。

「相続分」の譲渡は、譲渡人と譲受人の間の契約ですので、家庭裁判所が用意している書式では、両者の署名捺印を要する様式で行われます。

また、後日譲渡人の気持ちが変わっても、一方的に撤回することはできず、意思表示の瑕疵(意思能力がなかったり、錯誤などの無効事由、詐欺等の取消し事由)があったりする場合のみ無効となります。

「相続分」の譲渡は、共有持分権の譲渡とは異なりますので注意が必要です。

相続人は、相続財産を構成する個別の財産(遺産)について、相続分としての共有持分権を有していますので、その共有持分権のみを譲渡することもできますが、その場合は、ほかの財産(遺産)についての包括的相続分は元の相続人に残っていることになります。

相続分の譲渡については、こちらからご覧ください。

 

 

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執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 個人分野:家事事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 相続の相談件数年間285件(2019年実績)を誇るデイライト法

律事務所の代表弁護士。家事事件に関して、弁護士や市民向けのセミナー講

師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおい

て家事事件での取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を

執筆。


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