【最新版】自筆証書遺言の書き方|弁護士が要件と記載例を解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

自筆証書遺言は、理屈上は自分だけで作成できるため、作成費用がほとんどかからないというメリットがあります。

しかし、法律の要件が厳しく、これをクリアしなければ無効となるリスクがあります。

そこで、弁護士と税理士の資格を持つ専門家が「自筆証書遺言で失敗しないためのポイント」を解説します。

 

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、財産目録を除く全文を自筆で記載する形式で行う遺言のことをいいます。

他の形式の遺言書(公正証書遺言・秘密証書遺言)の説明や特徴についての比較は、こちらのページをごらんください。

遺言書は、被相続人となる方の意思を反映し、遺産を相続人に残すための大切な書類です。

遺言書を作成した後、誰かが勝手に遺言書を偽造・変造すると、被相続人の想いを承継することができなくなってしまいます。

そのため、偽造・変造防止のために、厳格な方式が定められています

他方で、不必要に厳格な方式を定めると、無効な自筆証書遺言が多くなってしまうという弊害があります。

そこで、2018年の相続法改正によって、自筆証書遺言の方式は一部緩和されることとなりました。

以下、法改正を踏まえた自筆証書遺言の注意点やポイントについて、解説いたします。

 

 

自筆証書遺言をつくるときの3つの注意点(法的有効要件)

①遺言書本文の記載は自筆が必要

自筆証書遺言書は、本文、日付、氏名は遺言者自らが署名し、かつ、押印しなければなりません(民法968条1項)。

引用元:民法|電子政府の窓口

【図1:自筆証書遺言の記載例】

 

②財産目録についてのみ自筆は不要

遺言作成の利便性の観点から、相続財産の特定に必要な事項(つまり、財産目録)については、自筆による必要はありません。

もちろん、自筆でも有効ですが、パソコンを利用して目録をタイプする方法が選択できます。

また、財産目録は、遺言者以外の者が代筆しても構いません

さらに、預貯金については通帳の写し不動産については登記事項証明書等を添付する方法でも大丈夫です。

自筆以外で財産目録を作成する場合の注意点
当該財産目録のすべてのページに自筆で署名と押印が必要
当該財産目録のすべてのページに、遺言者が自筆で署名し、かつ、押印しなければなりません(民法968条2項)。
当該財産目録が両面に記載されている場合、両面に自筆で署名と押印が必要
自筆以外で財産目録を作成する場合、片面のみではなく、その両面に自筆で署名し、かつ、押印しなければなりません(民法968条2項の括弧書き)。

 

③自筆証書遺言書を加筆・修正するときの注意点

自筆証書遺言書を加筆・修正する場合、遺言者は、遺言書の中でその場所を指示し、これを変更した旨記載しなければなりません

また、自筆で署名して、その変更の場所に押印しなければなりません(民法968条3項)。

遺言書を加筆・修正するときのサンプルを下記に示しますので、参考にされてください。

【図2:遺言書の修正例】

参考:民法の条文
(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:民法|電子政府の窓口

 

 

自筆証書遺言作成の5つのポイント

以下は法的な有効要件ではありませんが、トラブル防止のためのポイントについて解説します。

①書式等に決まりはある?

書式の決まりは?

法律上の規定はありませんが、遺言書であることをわかりやすくするために、タイトルには「遺言書」と記載したほうが良いでしょう(上記のサンプル【遺言書の修正例】を参照)。

用紙の決まりは?

法律上の規定はありません。便箋でも、ノートでも、A4用紙など特に決まりはありませんが、文字が書きやすくきれいな用紙にすべきです。

 

②筆記具はどうする?

筆記具について、法律上の規定はなく、ボールペン、万年筆、筆等なんでも構いませんが、偽造等の可能性がある鉛筆書きは避けたほうが良いでしょう。

前記のとおり、本文は自筆が必要なので、ワープロ等は不可です。

 

③日付はどう書く?

日付は、遺言成立時の遺言能力の有無や遺言の前後を確定するために必要です。

「2019年9月」などのような記載は、日付が特定できないので無効と考えられます(最判昭52.1.29)。

暦については?

西暦(例:2020年)でも和暦(例:令和2年)でも構いません。

「70歳の誕生日」や「還暦の日」などでもいい?

日付けが特定できるので法的には問題はありませんが、トラブル防止のために、「○年○月○日」などのようなオーソドックスな記載が望ましいと思われます。

 

④氏名はどうする?

氏名については、遺言者本人の同一性が認識できればよいため、法的には通称名やペンネームでも有効になると考えられています。

しかし、トラブル防止の観点からは、オーソドックスに戸籍上の氏名を記載したほうが良いでしょう。

 

⑤印は何でもよいか?

印鑑については、法的には認印や拇印でも可能と考えられています(最判平元.2.16)。

しかし、トラブル防止のために、拇印は避けたほうが良いでしょう。

遺言書が複数ページになる場合

綴じた上で契印をした方が望ましいと思われます。

 

 

自筆証書遺言の記載例

遺産ごとの記載例

遺言書を書く際、預貯金、生命保険、株式、不動産などの財産それぞれについての注意点があります。

当事務所は、財産ごとの遺言書の記載例について、ホームページ上に公開しています。

 

全財産を一人に相続させる遺言書の書き方

特定の相続人の一人に全財産を相続させる場合の遺言書の書き方の例は次のようになります。

第◯条 遺言者は、遺言者の所有する一切の財産を長男●●●●(○年○月○日生)に相続させる。

一人に全財産を承継する場合の遺言書の条項例は、基本的には上記のとおりです。

ただし、他の相続人から遺留分の行使などが懸念される場合、これを抑制するための付言事項を記載することもあります

※付言事項
付言事項は法的な拘束力はありませんが、相続人に納得してもらうなどの目的のために記載します。

 

 

自筆証書遺言の財産目録の書き方

自筆証書遺言書は、上記のとおり、別紙として財産目録を添付することができます

この場合の記載例をご紹介します。

なお、別紙として財産目録を添付する場合、図1のように、遺言書本文には「別紙の不動産(預貯金、株式)」など記載し、目録にも図2のように「別紙」と記載するとよいでしょう。

不動産の目録

【図3】

 

 

預貯金の目録

【図4:通帳の写しを添付する方法の見本】

 

 

 

 

株式の目録

【図5】

図3から図5の出典:法務省ホームページ

 

 

自筆証書遺言の費用

自筆証書遺言は、理屈の上では自分自身で作成することが可能です。

したがって、費用としては紙代などの実費しかかかりません。

しかし、上記のとおり、法定の要件が厳格です。

また、相続発生後のトラブルを回避するためには相続問題に精通した弁護士の助言のもと作成されることをお勧めします

弁護士に相談しながら自筆証書遺言の案分を作成してもらう場合、その弁護士に支払う費用が発生します。

弁護士の費用は、各法律事務所によって、金額が異なります。

明朗会計の法律事務所であれば、法律相談時にお見積りを出しくれると思いますので、まずはご相談されてはいかがでしょうか。

法律相談については、無料で対応してくれる法律事務所もあります。

 

 

自筆証書遺言のメリットとデメリット

自筆証書遺言のメリットとデメリットをまとめると下表のとおりとなります。

メリット デメリット
    • 遺言者が単独で作成できる(遺言の存在、内容を秘密にできる)
    • 費用がかからない
  • 意味不明、形式不備等により無効となるおそれがある
  • 遺言の紛失、隠匿、偽造のおそれがある
  • 家裁の検認手続が必要

また、遺言書には、自筆証書遺言の他に、公正証書遺言秘密証書遺言があります。

それぞれのメリットとデメリットを踏まえて、最適な遺言書を残すようにしましょう。

 

 

まとめ

上記のとおり、自筆証書遺言は、法改正によって様式が緩和されたとはいえ、一定の方式が法定されており、要件を満たさないと無効となってしまいます。

また、法的有効要件を満たしたとしても、適切に作成しないと思わぬトラブルが発生する可能性があります。

さらに、このページでは、自筆証書遺言について詳しく解説しましたが、遺言書は公正証書遺言等を活用する方法も検討すべきです。

具体的な事案に応じて、どのような種類の遺言書を作成すべきか異なるため、遺言書作成を検討されている方は、相続問題に精通した弁護士に助言を求め、トラブルを回避できるようにしましょう。

この記事が相続問題に直面されている方にとってお役に立てれば幸いです。

 


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