近年終活という言葉があるように、生前のうちに財産や生前整理をどうしておくかということが注目されています。
その中でも、遺言を作って配偶者や子のために残すというのは、よく知られている方法の1つではないでしょうか。
今回は、その遺言のうち、どういった方が遺言を書けるのかについて解説します。
遺言を書くためには?
遺言を作るためには、遺言をすることができる能力(遺言能力)というものが必要と言われています。
遺言能力には大きくは「年齢」と「遺言をするための能力」という2つの意味があります。
何歳から遺言をかける?
民法は、遺言を書くために、年齢の要件として「15歳に達した者」でなければならないと規定しています(民法961条)。
ですので、15歳以上であれば、遺言を作成することができます。
現在、日本では20歳以上が成人(※2022年4月からは18歳が成人となります)として扱っていることからすると、15歳の人がちゃんと遺言を残す能力があるのかと疑問をもたれる方もいるかもしれません。
しかし、日本では明治民法の流れを受けて、現在も15歳以上であれば遺言を残すことができます。
遺言を残すことができる年齢に上限はありませんので、90歳、100歳を超える人ももちろん遺言を作成することが可能です。
遺言能力のない人が遺言を書くとどうなる?
遺言能力がない人が遺言を書いたとしても、その人がした遺言は無効になります。
認知症の人の遺言は有効?(遺言をするための能力)
たとえば、認知症や統合失調症などをわずらい、判断能力が低下した人は、遺言能力が無いとして、その人が書いた遺言が無効となる場合もあります。
遺言を書く能力があるかどうかは、様々な事情を考慮して判断されます。
前記のとおり、遺言を書くことができる年齢に上限はありませんが、高齢者の遺言の有効性が争われる場面は少なくないことからすると、年齢は無関係とまではいえません。
認知症の方の遺言が有効となるかどうかについて、詳しくはこちらをご覧ください。
遺言を書く事ができるかの判断に遺言の内容の複雑さが関係する?
また、遺言を書くことができるかどうかの判断に、遺言の内容の複雑さが関係することもあります。
たとえば、単純な内容の遺言であれば、判断能力が多少低下しても作成は可能と判断される余地がありますが、複雑な内容の遺言であれば、作成は困難と判断されるかもしれません。
他方で、単純な内容の遺言であっても、読み取りが不可能な字体で書かれていたり、内容が成り立っていなかったり、語順もばらばら、ということになると、遺言能力が否定されることもあります。
遺言を書いたときの病状はどのように考慮される?
さらに、遺言を書いたときの病状や状況なども考慮されます。
遺言を書いた人の病状により遺言能力が疑われる場合は、主治医の診断書が重要な役割を果たします。
認知症の方の遺言が有効となるかどうかについて、詳しくはこちらをご覧ください。
有効な遺言を書くために・・・
このように、有効な遺言を書くには、15歳以上であることと、遺言能力があることが重要な要件となります。
認知症の疑いがある家族が残した遺言に疑問がある方、今から家族が遺言を書こうとしているが後々効力が争われることにならないかなど、遺言のことでお悩みの方は、ぜひ一度、相続専門の弁護士にご相談ください。