「相続させる」と「遺贈する」は異なる?「相続させる」旨の遺言の効果は?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

遺言書


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遺言で財産を残す場合、大きく分けて「遺贈する」とする場合と、「相続させる」(特定財産承継遺言)とする場合があります。

日本では、特定の相続人に、特定の財産を相続させる旨の遺言を残すことがよくあります。

これには、「相続させる」旨の遺言が持つ様々なメリットを期待してそう記したものです。

「相続させる」旨の遺言が持つメリット

登記手続におけるメリット

登記を取得した人の名義にする手続を行う場合

遺贈による場合には、すべての相続人に登記手続に協力してもらう必要があります。
これに対して、「相続させる」旨の遺言は、この遺言により相続した者が単独で登記の申請を行うことができます。

遺言に遺言執行者が指定されている場合

遺贈による場合には、登記権利者として受遺者と登記義務者として遺言執行者が共同申請をすることになります。
これに対して、「相続させる」遺言の場合には、遺言執行者が指定されていたとしても、「遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り」は、遺言執行者に不動産を管理する義務や引き渡しの義務もないので、遺言により相続した者が単独で登記申請をすることができます(最判平成10年2月27日)。

不動産の場合は遺言執行者も登記の申請が可能
遺言執行者には、遺言者が「相続させる」遺言をした場合でも、その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるとしているので(民法1014条2項)、相続させる遺言の内容が不動産についての場合には、受益相続人だけでなく、遺言執行者も所有権移転登記の申請をすることができます。

遺言執行者とはこちらをご覧ください。

 

その他のメリット

ほかにも、残された財産が賃借権や借地権の場合、遺贈による場合は、賃貸人の承諾が必要ですが、「相続させる」旨の遺言による場合、賃貸人の承諾が不要になるというメリットがあります。

今では違いが解消されていますが、かつては、遺贈よりも「相続させる」旨の遺言の方が、登記の際、登録免許税が少額で済むというメリットもありました。

 

 

「相続させる」旨の遺言があった場合の、その後の手続きは?

手続のイメージ画像特定の遺産を「相続させる」旨の遺言がある場合、その財産の所有権は、被相続人の死亡の時に直ちに特定の相続人に承継される(所有権が帰属する)と考えられています。

したがって遺産分割の対象財産から、その財産が外れることになります。

 

具体例1 すべての財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言の場合


仮にすべての財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言が残っていれば、遺産分割の対象財産が存在しないことになりますので、遺産分割の手続ができません。

具体例2 すべての財産の4分の3を特定の相続人に相続させる旨の遺言の場合

財産:土地A、土地B、土地C


他方で、もしすべての財産の4分の3を特定の相続人(太郎さんとします。)に相続させる旨の遺言が残っていた場合は、遺産分割手続により解決を図るのが相当です。

なぜなら、残された財産が、土地A、土地B、土地Cであった場合、被相続人は、A、B、Cそれぞれ4分の3ずつを太郎さんに取得させようと考えて遺言を残したわけではないでしょうから、その問題を解決するためには遺産分割手続によることが妥当と考えられるためです。

特定の財産を特定の相続人に残したい場合、遺言の書き方によって、遺言による効果や遺産を取得する者の手続きが変わってきます。

遺言に関するお悩みは、ぜひ相続専門の弁護士にご相談ください。

 

 

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執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 個人分野:家事事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 相続の相談件数年間285件(2019年実績)を誇るデイライト法

律事務所の代表弁護士。家事事件に関して、弁護士や市民向けのセミナー講

師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおい

て家事事件での取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を

執筆。


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