相続分の譲渡をした際の相続税の計算や申告の方法をおしえてください。


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続税についての質問です。

先日、父が亡くなり、私A、兄のB、妹のCの3人が相続人となりました。

遺産は預貯金3000万円だけなのですが、私とCはとても仲が良いので、Cは私に任せると言ってくれております。

しかし、Bとの折り合いが良くないために、遺産分割手続は進みそうにありません。

このままでは父が亡くなってから10ヶ月が経過してしまい相続税の申告時期が来てしまうので、Cから相続分の譲渡を受けようと思っていますが、無償にするか有償にするか、有償にするとしても額をどうするかを決めかねています。

遺産分割が終わっていない場合や、相続分の譲渡をした場合の相続税の申告をどうすればよいか教えてください。

 

 

相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告をする必要があります。

そして、遺産分割が終わっていない場合には、法定相続分で遺産分割したと仮定をして相続税の申告をすることになりますので、Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ法定相続分の3分の1である1000万円の預貯金を取得したとして、相続税の申告をすることになります。

もっとも、CさんからAさんに対して無償で相続分の譲渡をしている場合には、Aさんが3分の2である2000万円の預貯金、Bが3分の1の1000万円の預貯金を取得したものとして相続税の申告をすることになります。

また、CさんからAさんに対して有償で相続分の譲渡をしている場合には、Cさんが得た対価を相続により取得したものとして申告することになります。

最後に、仮に相続分の譲渡時には対価の額を決めずに、後にAからCに対して金銭を支払った場合には、相続税ではなく支払った金銭に対して贈与税が課せられる可能性がありますので、注意が必要です。

相続税なお、遺産分割が終了した後に、修正申告ないし更正の請求をする必要があります。

遺産分割が終わっていない場合の相続税の申告

税務署相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければならず、その間に遺産分割が終わっているかどうかで申告の仕方も変わってきます。

相続税の申告は、遺産分割が終わっているのであれば、遺産分割の内容に従って申告すれば足りますが、遺産分割が終わっていない場合には、相続人が法定相続分で取得したと仮定をして相続税の申告をすることになります。

 

 

相続分の譲渡がある場合

相続分の譲渡がある場合には、相続分の譲渡があったことを前提として、それぞれの相続人が取得したものと仮定して相続税の申告をすることになります。

無償譲渡の場合

相続分の譲渡が無償で行われた場合には、相続分の譲渡人の相続分を譲受人の相続分に加算した割合で遺産を取得したものとして相続税の申告をすることになります。

本件で、AがCの相続分を譲渡された場合には、Aが2000万円、Bが1000万円を遺産分割により取得したと仮定して相続税の申告をすることになります。

 

有償譲渡の場合

一方、相続分の譲渡が有償で行われた場合には、譲渡人は得た対価を遺産分割で得たものとして、譲受人は支払った対価を遺産分割により取得する予定の遺産から控除して計算することになります。

具体例 相続分の譲渡の対価として500万円を支払った場合

今回の質問者の事案でAがCに対して相続分の譲渡の対価として500万円を支払った場合、Aが2000万円から支払った対価500万円を控除した1500万円を取得したものとして、Cは相続分を譲渡したものの対価として受け取った500万円を遺産分割により取得したものとして計算します。

Aが1500万円、Bが1000万円、Cが500万円を取得する遺産分割が行われた場合の相続税の申告と同様になります。

遺産分割において代償分割がされた場合の申告と同様です。

有償譲渡の場合の留意点

有償譲渡の場合、額自体か、額を算定する方法を相続分の譲渡をする際に決めておかないと、相続分の譲渡が無償でされたものと税務署から扱われてしまい、後に支払った金銭に対して贈与税が課せられる可能性がありますので、注意が必要です。

例えば本件において、相続分の譲渡の際には特に金銭の授受はなく、1年後に遺産分割が終了したので、AがCに対して500万円を支払ったという場合には、結論的に有償譲渡の場合の具体例と同じですが、500万円は相続で取得したものとはされず、相続とは無関係に贈与されたものとして贈与税が課される可能性があるのです。

譲渡後の取り扱いについては、こちらからどうぞ。

 

 

事後処理

書類と印鑑上記の相続税の申告はあくまで遺産分割が申告期限までに間に合わなかった場合の暫定的なものなので、申告期限内に遺産分割ができた後は、実際に取得した遺産に応じて申告をし直す必要があります。

仮に、遺産分割をしてAが2000万円を超える遺産を取得した場合には、Aは相続税を追加で支払う必要があるので、修正申告をする必要があります。

一方、遺産分割をしてAが2000万円を下回る遺産しか取得しないということになった場合には、税金を支払い過ぎになるので還付を受けるために、遺産分割の時点から4ヶ月以内に更正の請求をすることになります。

もっとも、更正の請求はあくまで還付を求める請求なので、必須ではありません。

本件でも、Aさんは遺産分割後に、その結果に応じて修正申告や更正の請求をする必要があるのです。

 

 

まとめ

相続にあたっては、相続税や贈与税、譲渡所得など税金が絡んでくることが多く、遺産分割などをまとめる場合や訴訟で和解をする場合に税金を検討しないと思いもよらない税金がを課されることがあります。

弁護士は法律の専門家ですが、税金の専門家ではないので、ほとんどの弁護士が相続税についてはその算定方法すら知らない事が多いのが実情です。

そのため、相続の相談をする際には税金に詳しい弁護士に相談するか、税理士としっかりと連携できる弁護士に相談するのが良いでしょう。

 

 


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