収益物件を共有して賃料収入を得る場合の遺産分割協議はどうすればいいですか?


先日、父が亡くなりました。

相続人は、私の母であるA(60歳)のほか、私(長男30歳)B、私の姉(長女35歳)Cの3人です。

父の遺産は、以下のとおりです。

・自宅不動産:時価7000万円
・収益物件(賃貸借に出しているマンション1棟があり、住居は10戸。築15年):時価1億円
・預貯金:2000万円

母は福岡市内にある自宅不動産に住んでおり、このまま体が不自由になるまでは自宅に住み続けたいと言っています。

私と妹も、住み慣れた自宅で母が生活することに賛成しており、自宅を取得したいとは思っていません。

父は、マンション1棟を所有しており、住居数は10戸です。

立地がよく人気の場所であり時価は1億円程度です。

賃料収入として、満室の場合月額150万円程度が入ってきています。

母と妹と話し合ったところ、母が自宅を取得し、預貯金は母が半分(1000万円)で、私と妹が4分の1(500万円)ずつを取得するという内容で意見が一致しています。

また、収益物件については、私と妹が共有して取得し、今後賃料や管理会社に支払う費用を折半したいと考えております。

このような遺産分割が可能でしょうか?

 

 

遺産である不動産の共有が認められるか?

お金遺産の相続について、民法は、相続人は、相続開始のときから、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継する(ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りでない。)と規定しています(896条)。

したがって、賃貸に出している不動産の賃貸人の地位のような権利義務につても、相続人は承継できることとなります。

また、本件のように、相続人が複数名のときについて、民法は「相続財産は、その共有に属する」としています(898条)。

さらに、民法は、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」としています(899条)。

したがって、本件では、遺産分割によって確定されるまでの間、Aさん(母)が2分の1、Bさん(長男)が4分の1、Cさん(長女)が4分1の持分で、遺産を共有していることになります。

 

 

不動産の共有の問題点

一般的に、不動産の共有を継続することはおすすめできません。

なぜならば、将来、相続人間(上記の事案だとBさんとCさん)で折り合いが悪くなった場合、トラブルが発生する可能性があるからです。

また、BさんかCさんが亡くなった場合、権利者が大人数となって権利関係が複雑化します。

しかし、本件では、収益物件の時価が1億円であり、単独名義での遺産分割は難しいと思われます。

例えば、Bさんが単独で本件収益物件を取得した場合、通常、他の相続人は代償金をBさんに求めます。

例えば、Cさんが、時価の半分である5000万円を請求した場合、Bさんはそのような大金を支払う余裕などないことが想定されます。

このようなケースでは、収益物件を共有する方が現実的だといえます。

 

 

遺産分割協議書の記載例

では、収益物件を共有して賃料を得る場合、具体的にどのような遺産分割協議書を作成すればよいのか、以下では今回のBさんの場合を例に示します。

第○条 自宅不動産について
Aは、別紙遺産目録1記載の不動産(以下「自宅不動産」という。)を取得する。

第○条 収益物件について
1 B及びCは、別紙遺産目録2記載の不動産(以下「本件収益物件」。)を共有(Bの持分2分の1・Cの持分4分の1)により取得する。

2 本件収益物件は、賃貸物件として共同して利用するものとし、B又はCが本件収益物件の全部又は一部を占有使用するには相手方の同意を得なければならないものとする。

3 本件収益物件に係る賃貸契約の媒介、利益の分配、費用の支払い、保守管理その他賃貸に必要な事務は、不動産業者に委任して行うものとし、その選別及び委託内容については、次の各号に定めるほか、B及びCが協議して定めるものとする。

①本件収益物件の賃料及び費用は、B及びCが折半する。

②賃借人から受領した敷金については、B名義の●●銀行●●支店の普通預金口座(口座番号●●)に預け入れ、B及びCの双方の同意なく費消しないものとする。

4 B及びCは、本件収益物件について本日から5年間、共有物の分割をしないことを合意する。

第◯条 預貯金について
1 次の預貯金はAが取得する。
◯◯銀行 ○○支店 普通 口座番号○○○○  2000万円(相続開始日の残高)

2 Aは、前項記載の預貯金を取得する代償として、各相続人に次の価額の債務を負担することとし、それぞれの指定する口座に◯年◯月◯日限り、振り込む方法により支払うものとする。振込手数料はAの負担とする。
Bに対し、金500万円
Cに対し、金500万円

 

遺産分割協議の書式のダウンロードは「遺産分割関連書式集」からどうぞ。

 

 

遺産分割協議書のポイント

共有物の分割請求を制限する

遺産分割協議書遺産分割協議が成立しても、法的には共有物分割請求が可能です(民法256条1項)。

せっかく、遺産分割協議書を作成しても、すぐに共有物の分割請求がされてしまうと意味がありません。

そこで、上記のBさんの場合では、共有物の分割請求を5年間行使できない旨定めています。

なお、共有物の分割請求は5年以下であれば認められています(同条項)。

 

代償分割について

本件事案では、預貯金についてはAさん1000万円、Bさん500万円、Cさん500万円という方向で意見が一致しています。

ところが、Bさんの場合では、まずAさんが預貯金の全額2000万円を取得し、その代りに、BさんとCさんに500万円を支払うという内容にしています。

このような記載内容にしているのは、手続の円滑化のためです。

すなわち、相続人間の話合いで、銀行預金を分割すると、遺産分割協議書だけでなく、金融機関の所定の書類にも、AさんからCさん全員の署名捺印を求められるのが一般的です。

そのため、大変な手間暇を要することとなります。

そこで、Aさんに預貯金を集中して相続させ、そのかわりにBさんとCさんに代償金を支払うという分割協議にしています。

 

 

不動産を共有する遺産分割協議の問題点

遺産に不動産があるケースの遺産分割協議には、以下のような問題点が考えられます。

不動産の時価算定は困難!?

賃貸物件評価のイメージイラスト本ケースでは、自宅不動産の価値を7000万円、マンションの時価を1億円と決めつけていましたが、実務では、この価額をめぐって争いとなります。

なぜならば、不動産の時価は、固定資産税の評価額や相続税の評価額とは異なり、確定していないため「評価」が必要となるからです。

また、不動産に関しては、これを取得する側にとっては「安い」ほうがメリットがあり、その他の相続人にとっては「高い」ほうが代償金の額が高くなるというメリットがあるため、一般的には利害衝突が起こる可能性があります。

特に、本件のような高額物件の場合、評価手法によって評価額の上下の差がとても大きいため、損をしないためには、「適切に評価すること」が最重要です。

なお、相続の場面において、時価ではなく、固定資産税の評価額をもとに遺産分割協議を行う場面を見ますが、おすすめしません。

固定資産の評価額は、通常、時価よりも価額が低いことが多いからです。

特に、本件のような高額物件の場合、固定資産の評価額は時価よりも大幅に低いことが想定されます。

 

 

遺産分割協議書の作成は簡単ではない!?

遺産分割協議書は、後々のトラブル防止のために、適切な内容のものを作成すべきです。

素人判断で適当に作成すると、法的有効性を欠き、後日トラブルとなって、不利益を被るということも考えられます。

そのため、遺産分割協議書作成については、相続問題に詳しい弁護士にご相談の上、進めていかれることをおすすめします。

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