相続税は配偶者が全て相続すれば節税できる?【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続

弁護士の回答

弁護士節税の可能性はありますが、2次的な相続を考慮する必要があります。

配偶者に対する相続税額の軽減が1億6000万円もあると聞きました。

それなら、配偶者がすべて相続することにすれば簡単に節税できるのではないですか?

当事務所の相続対策チームには、このような相続税に関するご相談が多く寄せられています。

ここでは、具体例をもとに、節税の効果について解説します。

以下の具体例は下記のページのものです。

 

具体例 Aさんが死亡し以下の財産がある場合の相続税

財産:200㎡の自宅(評価額1億円)及び4200万円の預貯金

被相続人:配偶者Bさん及び子どもCさん(法定相続分:2分の1ずつ)

通常の計算式は以下のようになります。


課税価格

1億円(不動産の評価額)+ 4200万円(預貯金)= 1億4200万円

基礎控除額

3000万円 + 600万円 × 2(法定相続人)= 4200万円

課税遺産総額

1億4200万円(課税価格)- 4200万円(基礎控除額)= 1億円


各人の相続税の総額
配偶者Bさん

1億円(課税遺産総額)× 1/2(相続分)= 5000万円
5000万円 × 20%(税率)- 200万円(控除額)= 800万円
800万円 – 配偶者に対する相続税額の軽減(1億6000万円)= 0

子どもCさん

1億円(課税遺産総額)× 1/2(相続分)= 5000万円
5000万円 × 20%(税率)- 200万円(控除額)= 800万円

なお、税率の早見表について、詳しくはこちらのページを御覧ください。

 

 

配偶者の税額軽減とは

電卓配偶者の税額の軽減とは、簡単に言うと、最低1億6000万円※までは、配偶者に相続税がかからないという制度です。

※仮に、法定相続分相当額が1億6000万円よりも高ければ、その額まで相続税はかかりません。上記の例で、仮に、預貯金が3億円あったとすると、配偶者Bさんの法定相続分相当額は2億円となります。

計算式

1億円(不動産の評価額)+ 3億円(預貯金)= 4億円
4億円 × 1/2(法定相続分)= 2億円

なお、この配偶者の税額控除は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した遺産額を基に計算されます。

したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は軽減の対象とならないので、注意が必要です。

 

 

配偶者が全て相続すれば節税できる?

配偶者の税額軽減は、最低1億6000万円もの額を非課税にできるという制度です。

そうであれば、上記の例でも、子供Cさんには相続させずに、全て配偶者Bさんが相続を受けたほうがお得なようにも思えます。

上記の例で、子供Cさんは、5000万円を相続して、800万円もの税金を収めなければなりません。

もし、配偶者Bさんが全ての遺産を相続すれば、税金は0円となります。

計算式

    • 課税価額
      1億円(不動産の評価額)+ 4200万円(預貯金)= 1億4200円基礎控除額
      3000万円 + 600万円 × 2 = 4200万円課税遺産総額
      1億4200円(課税価額)- 4200万円(基礎控除額)= 1億円

 

  • 相続税の額
    配偶者Bさん
    1億円(課税遺産総額)× 30%(税率)− 700万円(控除額)700万円 < 1億6000万円(配偶者の税額軽減)⇒ 相続税はゼロ

以上から、たしかに、配偶者Bさんが全て相続した方が相続税800万円も節約できるように見えます。

しかし、このように考えるのは早計です。2次相続の問題を考えなければなりません。

しかし、配偶者が死亡した場合には、子どもへの相続があり、その際には結局高額の相続税がかかることになってしまうため、トータルで見て節税になっていないことになりかねません。

被相続人が高齢で死亡した場合には、相続人である配偶者もその後それほど経たないうちに死亡することはよくあることです。

また、注意しなければならないのは、1次相続よりも2次相続の方が相続税が割高になってしまうことがあるということです。

それは、配偶者がもともと資産を有している場合です。

相続の税率は、遺産が増加すればするほど、税率が上がる仕組みとなっています(最低10%から最高55%)。

なお、税率の早見表について、詳しくはこちらのページを御覧ください。

したがって、配偶者Bさんに資産があると、2次相続の際の相続税の税率が上がることで、節税にならないどころか、むしろ、増税になる可能性があります。

つまり、相続人(配偶者)が死亡することで二次的な相続(配偶者から子ども)が生じることも考慮して、節税策を考える必要があるのです。

 

まとめ弁護士以上、配偶者が全て相続する場合の節税の効果について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

配偶者が全て相続すると、相続税の軽減額が高額なため、一見すると節税になりそうな気がします。

しかし、2次相続時のことを考えていないと、節税にならないどころか、むしろ増税の効果をもたらす可能性があるので注意が必要です。

そのため、節税対策は、相続税にくわしい専門家にご相談の上、対策を取られていくことをお勧めいたします。

当事務所の相続対策チームは、相続問題に注力する弁護士・税理士のみで構成される専門チームであり、節税対策についてもサポートしています。

相続問題でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談されてください。

ご相談の流れはこちらのページを御覧ください。

 

 

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執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 個人分野:家事事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 相続の相談件数年間285件(2019年実績)を誇るデイライト法

律事務所の代表弁護士。家事事件に関して、弁護士や市民向けのセミナー講

師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおい

て家事事件での取材実績がある。「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を

執筆。


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